ロマンの香り

前回に引き続き、エジプトの話である。

3年ぶりのエジプトでの海外ロケ。
今回一番の見所は、4300年前の石棺を開封するというロケである。

考古学大国らしい、なんともロマンが詰まったネタである。

4300年前というギャグのような数字と石棺という聞き慣れない言葉に、わたしははじめ、ことの重大さにピンときていなかった。

そもそもわたし自身、考古学マニアというわけではなく、ピラミッド、クフ王の墓、ツタンカーメン、クレオパトラ、という誰しもが思いつくであろうエジプトにまつわるワードしか出てこない平々凡々の人間である。


そんなわたしだが、話を聞けば聞くほど、それがどれだけすごいことなのか実感がわいてきた。

石棺というのは、石でできた棺のことである。
そして、その石棺は、4300年間一度も開けられていないであろうということ。
4300年前といったら、日本でいうと縄文時代。神武天皇が誕生するはるかはるか以前のもの。

その石棺を何個も何個も時代を超えて開封するのだ。
一体中はどうなっているのか、どなたか、何かが存在しているのか。

気がつきゃ、わたしゃめちゃめちゃ興奮していた。
信じられないほどのにわか人間ではあるが、なんのご縁か、この一世一大の開封に立ち会える奇跡。

わたしが唯一できることは、この奇跡や事実をテレビを通してリポートする。
これのみだ。

石棺の開封当日。
この方なくして石棺は開封できないというザヒ博士と合流し、いざ現場へ。

まるで映画のセットのような竪穴に繋がる道を博士と進んでいく。
脳内ではインディージョーンズが流れていた。
積まれた石をどかしながら、竪穴を進んでいくと、石棺が埋葬された空間にたどり着いた。
扉を開けるときに、ザヒ博士が

「イモト、これが4300年前の空気だ。
 嗅いでみろ」

その空気は、とてもひんやりしており、何とも言えない実家の蔵のような、はたまたおばあちゃん家の押し入れのような、いや本当に例えようのない4300年が詰まった匂いがした。

3年ぶりの今回のロケの準備で、久しぶりに海外用のスーツケースを開けたときも何とも言えない3年間が詰まった匂いがした。

ただ、今いる場所はそれどころではない。
4300年分が詰まっているのだ。
もはや、良い香りとか臭いとか、そういった次元の話ではない。
歴史そのものの香りなのだ。

そんな貴重なロマンが詰まった空気、わたしは思いっきり吸い込んだ。


その後、石棺は丁寧に開封され、中には4300年前に埋葬されたミイラがいらっしゃった。

こんな貴重な興奮する経験はなかなかできるものではない。



帰国後、このお話を自身のラジオでも興奮気味に話したのだが、収録後、ディレクターさんが
「ちなみに、ツタンカーメンの開封に関わった方は、皆謎の死をとげていますよ(どうのこうの・・・)」

わたしゃ絶句した。

なんて情報をくれたのだ、と嘆くわたしのあまりの焦りように、みんなしきりに

「都市伝説みたいなもんですから」
「今何もないなら大丈夫です」

と何の根拠もない励ましをはじめた。

一ヶ月以上も前のことだし、今回はれっきとした研究目的で開封させてもらった。
大丈夫大丈夫と自分に言い聞かせつつ。

ミイラさん、勝手に開けてしまい申し訳ありません。どうかどうか、何事もありませぬように。

 

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