「コンタックスT3」とやら

前回、散々ライカのことを話し、いかにもライカを買うと見せかけてしまった。

しかし、買ったのはまさかの「コンタックスT3」というフィルムカメラ。
自分でもよく分からないのだが、こういうことが、結構日常的にある。

絶対に餃子定食を食べようとお店に入ったのに、なぜかメニューの写真で一目惚れしたレバニラ定食を頼んでしまう。

あの感じに今回もすごく似ていた。
そして、いつも思うのは
「これにして良かった」
単純なひとである。

ちょっと話はズレたが、その日からわたしの頭の中は「コンタックスT3」でいっぱいになった。
調べれば調べるほど、欲しくなった。
驚いたのは、買おうと思っても、今はもう生産されてない20年以上も前のもの。

中古品を探すのだが、これがなかなか売っていない。
大型中古店の在庫をネットで探したのだが、入荷なしとの表示。

こうなってくると、わたしという人間は執着が止まらなくなる。

つい一ヶ月前までは存在すら知らなかったくせに、今やもう、何年も前から欲していたかのように検索魔になっていた。

探していると、四谷近くにある「カメラの極楽堂」というコンタックスカメラ専門店があり、そこで数台販売されていることがわかった。

極楽堂・・・パンチがありすぎやしないかと思いつつ、念のため電話で在庫を確認し、気がつきゃ車を走らせていた。

お店の前に着くと、これまたかなり趣がある。
「もう何十年もフィルムカメラで撮影してるでやんす」的な人でないと入ってはいけないのではないかと圧倒された。

ただ、ここまで来て帰るわけにはいかない。
勇気を出して店に入ると、カメラ好きのとても素敵なお兄さんが対応してくれた。
聞けばその方も「T2」を使っているとのこと。
フィルムの入れ方や、自動巻きまで、ド素人のわたしに丁寧に教えてくださった。

なにかあったらまたここに来れば、どうにかなると思わせてくれるまさに極楽のようなお店。

「カメラの極楽堂」さんには、フィルム自体は売っていなかったので、帰りに新宿の大型店でフィルムを入手しようとした。

ところがである。
どのお店に行っても、フィルムが在庫切れなのである。
店員さんに聞いてもまだ「入荷が未定」としか言われない。
カメラはあるのにフィルムがないという状況に、一瞬フィルムカメラを買ってしまったことを後悔した。

店舗は諦め、少し割高ではあるが、ネットショップでなんとかゲットした。

待ちに待ったフィルムが届き、セットし、早速一枚撮ってみる。
当然のことながら、確認はできない。
24枚撮りだったので、すぐになくなってしまうだろうと思っていたのだが、実際は一枚一枚をとても大切に撮るので、何日もかけて一本のフィルムを使い終えた。

スマホやデジタルカメラだと、撮っては消しを繰り返すのだが、このカメラではそれはできない。

けれどその代わり、より写真を撮る楽しさを味わえるような気がした。



そして、現像するワクワクもまた味わいである。
すぐにインスタグラムにはアップはできないけど、その「待つ」という行為自体がとても新鮮に思えた。

デジタルの良さもキープしつつ、また新たな旅のお供ができました。

SHARE: