土鍋のうそ

この10月からTBSにて放送の火曜ドラマ「マイ・セカンド・アオハル」に出演させて頂いている。
数年ぶりのお芝居。
撮影前からドキドキであった。

ただ、ずっと、機会があればやりたかったこと。
しかも、監督は以前「下町ロケット」でお世話になった青山さん。

こういったご縁はとにかく大切に、そして、どうにか歯車の一つとなり、役に立ちたいと思っている。

お芝居というのは、大きなうそが大前提としてある。

実際とは違う職業も別人格も演じるし、本当の恋人ではない人を好きになり、ときには犯罪まで犯す。
全てお芝居という、うその中でやっていることだ。

けれど、わたしが尊敬している役者さんには、うそがない。
とても矛盾しているが、その瞬間瞬間は本当で、そのひとつ一つが繋がると大きな本当になるのだ。

わたしもできることなら、そういった本当を演じられる人になりたいと思っている。


そのためには、圧倒的な演技力をつけなければならない。

ドラマ撮影に入る前のこと。
一抹の不安を覚えることがあった。

バラエティー番組の収録で、8年ぶりくらいに、以前お世話になっていた中京テレビのスタッフさんとお仕事をした。

律儀なその方は、渡せていなかったからと結婚祝いと出産祝いをくださった。

大きな箱に入ったかなり重量もあるもの。

「なんだろう?」とワクワクしながら贈りものを開けたその瞬間。
わたしの目に入ってきたのは、すでに持っているのと全く同じメーカーの土鍋であった。

一瞬、あっ、と思ったが、そこは上手に
「わー嬉しい!!!」
と動揺をかき消すように、大きな声で喜んだ。

実際のところ、同じ土鍋ではあるが、サイズが一回り大きく、本当に、最近買い替えたいと思っていたものだった。



それを正直に言えばいいものを、わたしの反応からなにかを察知したのか、スタッフさんが
「持ってないですよね?」
と聞いてきた。

「実は・・・」というチャンスだったのに、食い気味に
「持ってないです!!!」
とうそをついた。

なんとかその場は、演技で切りぬけたつもりだった。

後日、共通の知り合いづてに

「あのときのイモトさんの様子がどうしても気になり、SNSなどを調べたら、同じものを使われていたみたいで、気を遣わせてしまい、申し訳なかった」

と連絡がきた。

最悪の結末である。

わたしの下手なうそが、せっかくのプレゼントの後味を悪くさせてしまった。

というか、下手という問題ではなく、そもそも正直に言えば良かっただけの話である。

反省しつつ、もうすぐ撮影がスタートするドラマでのお芝居が不安になった。

けれど、ドラマはとても面白いので、ぜひ見てちょ。

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